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02/10/20 Sun
寝袋の中は暖かい。陽が注し込む。
今日は朝がのんびり。なんつったって今日は、あと下界に降りて飛行機に乗るだけだから。
朝日が注し込む中、トイレまで散歩に行く。ぶるっ、寒っ。
この開陽台キャンプ場、水場はすぐそこにあるが、トイレは展望台の営業が終わると下の駐車場まで行かないと無い。
悲しい。
お湯を沸かしながら、ラジオを聞く。しっかし、ここはAMが入らない。
ラジオが悪いんだろうが、昨日取りつけたインチキアンテナも効果を発揮しない…。
開陽台の朝、まわりの山々や下界の家々などに陽が注し込むのが見える。
空は雲少ないよい天気だ。しばし、ここでのんびりとしよう。（06:18）
っぽっかぽかぁ〜〜〜ほんがぁぁぁ〜〜〜〜。
日差し注し込むテント内では、一人のチャリダーがあまりに静かな時間を過ごしていた。
そ〜だ、俺にはここに来て最後の任務「おみやげ」ってのがあったなぁ。
10時半。晴れた開陽台を降りることにする。
悲しいかな、開陽台のおみやげ屋さんでは、たいした収穫はなく、最後の任務「おみやげ」は遂行できない。
これより下界におり、さらに任務遂行の為に活動するのである。
下界。あっと言う間に下りきる。行きの倍速で走り去る。
開陽台からの道は、わずかにだが下り勾配のようだ。ほんとにわずかにではあるが。ペダリングが軽い、軽い。
行きにも見た牛君に今回はのんびり挨拶。何だ、何だと寄ってくる。しかし、私はなにもしない。
直に中標津空港が見えてくる。おっと、これから飛び上がる飛行機発見。飛行機撮影を開始する。
…が、飛び上がる瞬間に電池が切れて、あわくって電池を入れかえるので、飛び上がる瞬間は撮れず。
空港に立ちより土産をあさる。今でなくても…とはいかない。随分買い込んだなぁ。
すぐそこは中標津市街である。そこは温泉、温泉。昨日、見つけておいた温泉に入る。
一週間分の汚れを落とす。最悪だったのは髪の毛。初日、二日目で海沿いを走って海水でバリバリだった。
それを洗い流して、サッパリだぁ〜。ぷはぁ〜。
今度は、温泉をみつけたら忘れずに入ろうと決意するのであった。
温泉の後は、荷物整理と昼飯。昼飯と言っても、残飯のパンに、ソーセージ１本だが。
中標津町営野球場のを見ながら、荷物を仕分ける。こうしてみると、随分と荷物が減ったもんだ。
遠くで、いやすぐそこで何かバンドみたいな、できそこないな音が聞こえる。叫んでいるだけ…。
まぁいい。そんなものはほっておく。
郵便局。ゆうゆう窓口の開いている中標津郵便局にて、チャリに装備している荷物類をゆうパックにて送る。
初の試みなだけに、不安でいっぱいだったが、係りの人が親切で助かった。
荷物が二つで、3000円ちょい。もっとうまくしばり合わせて荷物を一つにすれば、もっと安かったかも…。
続けて、ヤマト便。しばらく中標津市街を走り、東１２条と呼ばれる場所へ…。
しっかし、チャリ軽いなぁ〜♪歩道を走るママチャリ小僧には負けないぜ。涼しい顔して抜いてやる。
さっき、ゆうパック送るときに荷物の重さを計ってもらったが、リアのサイドバックとテントで13kgだそうだ。
テントはカタログ値で5kgだったから、あとサイドバックに詰め込んだ着替えや食器などで8kg程度ってことだ。
それを元に実際、走っているときの重さを考えると…
リアには水1.5Lペットを２本積むので3kg追加。
食料も積め込むので2kgは追加。(米で1kgはあるからなぁ）
寝袋は重さがほとんどないだろうけど、1kgくらい追加しておく
フロントには、サイドバック２個。これに工具や、食料を積め込んで4kgだろうか。
フロントバックは軽いものしか入ってないので、あっても1kgだろう。
あと、チャリには2Lの水ペットと500mLのドリンクを搭載するので2.5kg追加。
そ〜するとど〜なるんだろうなぁ。
え〜〜っと。26kgちょい。う〜ん。30kg弱かぁ。重いなぁ。それにチャリも重いしなぁ…。
と、今更ながら自分の無意味に重い装備に呆れたりしながら中標津のママチャリ小僧を抜いて行く。
ヤマト営業所はすぐあるかなぁ…。あ、あった。どでかいヤマトの看板。簡単だなぁ。メインの道沿いだし。
ばらしに入る。ばらすのは好きだ。しかし、ハンドルが意外にかたい！！ぐえぇ〜。力技で回す。
ばらしにかかったのは1時間ちょいか。あ〜でもない、こ〜でもないと部品を外す。
バンドぐるぐる巻きにしてタイヤやキャリアを固定する。多分、俺以外は簡単に外せないんじゃないだろうか…。
そして、そのまま輪行袋に入る。人はこれを輪行と言う。
チャリはそのまま、自転車屋に直行となるため、自転車屋行きの土産も入れておく。積め込む、積め込む。
サイクルヤマト便は、3520円。
しっかしだ、今日一日で旅の総資産の８０％近くを使っている気がする…。
自転車も手放し、荷物もサイドバックひとつを除いて手放した。
中標津の街をあるく僕は、もう旅人には見えない。気持ち、顔が焼けているかもしれないけれど。
街を歩く僕を振り返って見るものはもういない。少し寂しい…。
陽は傾いている。スーパー東武による。Ａ−ＣＯＰＥに寄る。
秋の中標津バスターミナル。いかした木のベンチで飯を食う。最後の飯は寿司セットと、タコ焼き12個入り。
目の前のデジタル温度計に表示されている気温が、みるみる下がっていく。
気付けば陽はすでに沈もうとしている。８度を切る。７度を切る…。ぶるるっ。うぅ。寒い。
こんなに寒いとはなぁ…。
落ち葉舞い散るバスターミナルは、気温が下がると同時にどんどん寂しい空色。
ここは、どこだろう。僕はそんな錯覚に襲われる。
ふいに、視界に入る壊れた自転車。「あ、チャリ乗らなきゃ…。」そんな錯覚。
意外な感覚。今まではどんな旅でも、初めも終わりもチャリと一緒。大汗かきながらでも一緒に移動した。
それが、今回はいない。多分、いないときはそう思うのだ。いる時は、そうは思わない。
しかし、寂しいなぁ…。また、この寒さがそう思わせるんだろう。この季節が…。
７番乗り場。空港行きのバス。中標津バスターミナルから、空港までは230円。
歩けない距離ではないが、この寒い中歩くのは嫌である。
バスに乗り景色を眺めれば、「あぁ、北海道のバス旅もいいもんだなぁ。」なんて、もうバス旅気分。
そんなあほは、ほっといて、空港はすぐに見えてくる。
飛行機搭乗は、実はほぼ初体験。なぜ「ほぼ」かと言えば、以前乗ったのが修学旅行だからである。
搭乗手続き何も無しで乗るだけ。だから、乗り方からなにから僕は知らないのだ。
インターネットでチケット予約。チケットは券売機みたいので買う。
緊張の荷物検査。ドキドキ。なんだか、いらないものまで見せてる気がする。
無事、一発で通過。ふぅ。
待合い室ロビーで待つ。しっかしフェリーとは随分と異なる客層だなぁ。
なんか、インテリっぽいと言うか、なんと言うか…。
1830中標津空港発ANK840便は、5分出発に遅れるらしい。「え〜」っという待合いロビーの面々。
何言うかね、フェリーだったらそんなの平気よ。１時間遅れたり、早まったりするんだから。
そうこう言っても、出発10分前には搭乗手続き開始。そして、機内へ…。
フェリーだったら、１時間も前に乗り込んでるのなぁ。こっちは10分か…。
滑走路走行。滑走路脇の表示が、５，４，３，２，１と減る。これだけでも随分と速い気がする。
このまま飛ぶのか？と思うほど。（俺はそれほど、飛行機初心者なのだ）
しかし、まだ序の口だった。滑走路の端でＵターンし。一気に、俺の座席左後ろのエンジンが唸りをあげた！！
ずごっぉぉぉぉぉぉぉっーーーーーーー
目が点…。こ、この加速…。俺は一体、何のためにチャリで走っていたのだ…。
すごい！飛ぶぞ機長！！
ふわりと浮き上がる。食い入るように窓の外を覗き込む俺は、一体何者か…。
中標津の格子状の街が、くっきりと夜景となって明かりを灯す。「また来るさ」そう思う。（急にクールになる）
視界の中に一部、一部が明るく灯されている。街が点在している証拠である。
次々に見えてくる、街の明かり。それぞれが、違った形で灯される情景は、僕の走った記憶を返させる。
あれは、厚床の、街かな？あれは、別海かな？あの大きな明かりは釧路か？そーすると、俺のテントが…。
向こうに見える、ひときわ明るいのはノサップ岬の灯台だろうか…。
下に見える街の光りが、雲に邪魔される…。「雲の上にいるのか…」
今回の北海道でもそうだ、いつも見上げるばかりの雲。寝転がれば、静かに空に浮いていた雲。
時には、太陽を遮り、はやくどいてくれよと思わせてくれたりもした。
そんな雲が、今は自分の下に入るのか…。
…お、結構揺れるなぁ…。
シートベルト、機内サービス、機内販売といくつかの喚問を突破した俺は、漆黒の闇となった窓の外に自分を見ていた…。
旅の終わり…僕はいつもそうだ。
旅の終わりは何か意識が遠退いて、自分が自分でないように思えてくる。
あの景色、あの経験、あの人達…
とっても過去の事か、夢の中の出来事のように思えてくる。くやしくて、くやしくて悲しくなる。
そんな時は、自分の手を見る。陽に焼け、汚れた爪に、傷ついた手。
いつもそうなのかも知れないが、これはいつもと違う。そう、何かした後の手。
それは、日常の自分ではない自分をそこに見る。
まだ、旅は終わっていない。
ここは、上空…何千メートルか、何万メートルか。
でも、今回はここで終わっておこう。次の旅に向かって飛んでいる今として。
(2002/10/20.19:56
ANK機内にて）
今日は：開陽台→中標津→中標津空港→羽田
距離は：距離はあるが、チャリ距離はごくわずか。総走行距離698kmではあった。
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